デヴィット・フォルトゥ氏。
思わず、手も口ほどに熱弁をふるっている。


ヴェルドー


ヴェルジュラックの彗星はまだまだ夢を追いかける
十分に整えられた環境でブドウは最上のワインとなる
ヴェルドーを訪れて

何故91点なのか

 ある日、ワインにつぎつぎと点を付け歩くことで世界一有名なワイン評論家、ロバート・パーカーJr.が何気に付けた91点は、ごく気軽なヴェルジュラックの甘口ワインだった。

“ ベルジュラックの彗星 ”は、まだまだ夢を追い続ける。
 ボルドーの大有名なソーテルヌなどの甘口ワインに押され、昨今は全く田舎者扱いで、ぱっとしないこのあたりのワインにあってこれはかなりの快挙であったろう。
 が、しかし、このパーカー先生のありがた〜い、91点をいただくまでにもワインメーカー・デヴィット・フォルトゥのコンクールでの獲得メダルは20を超えていたのである。  
 お膝元のベルジュラックのコンテストでは、もちろんダントツの一位、98年のブリュッセルのワールドワイドチャンピオンシップでは世界2300蔵をむこうに回し、堂々ベスト11に選ばれマコンやボルドーのコンクールも総なめしている。
 しかも、スタンダード、ミドル、トップとどのクラスでも彼 のワインは常にメダルを獲得している。
彼の辞書に手抜きという文字はない。

 作れるものは道具もタンクもなんでも作る。いいワインを作るためだけに彼は毎日生きているのだ。しっかりした、自然な果実味あふれるこの男のワインを天下のパーカー大先生が見逃すはずがない。 獲るべくして、獲ったのである。 この6月に彼のメダルはまた増えていた。もうこのまま行くとそれを列記する欄の余裕はどこにもなさそうだ。


美しく植えられたぶどう畑
十分に整えられた環境でブドウは最上のワインとなる
 デヴィッド・フルトゥ氏は、弱冠三十才。彼の一家がここでワイン造りを始めたのは、彼の曾祖父の代のことである。 ワイン造りはデヴィッドで四代目。若々しさの中にも緻密に計算された絶妙のバランス。彼のセンスのよさは、パーカーも認めるところ。

 三レヴェルのシリーズは赤・白・ロゼともにみごとな味わい。中でも、グラン・ヴァンは、スーパーベルジュラックの実力を存分に堪能させてくれる。ぶどう畑は三十ヘクタール。ベルジュラック赤、白、ロゼ、コート・ド・ベルジュラックの赤と白の半甘口、そしてモンバジャックのワインを造っている。フルトゥ氏は、所有している畑の土質を詳しく調査し、それに合わせてブドウを植えている。

 彼が造るワインは、三つのクラスに分けられる。スタンダードなものが"CLOS DESVERDOTS"その上のクラスが"CHATAU LES TOURS DESVERDOTS"、さらに最上級品が"LES VERDOTS SELON DAVID FOURTOUT"である。一九九五年に造り始めたこのシリーズは、ラベルデザインも斬新で、ベルジュラックワインのイメージを一新するようなワインである。


小川の流れる、地下のシェ。水音が静寂を深める。

せせらぎは外の泉につながる。
フルトゥ氏は、醸造設備もカーブも自分が仕事をしやすいように、自分がイメージしたワインが造れるように工夫し、作り上げてきた。シェに並ぶトロンコニックのタンクも、微妙に角度を変えたものを特注し、実際に試しながら望ましいものに統一していく。土壌の質を調べ、最もふさわしいブドウを植える。そして得られたブドウが持つ力が最大限に発揮されるようにシェを準備する。

 ウズ高く詰まれた土の山と、隣に空けられたトロンコニックのタンクの設置の為の穴。醸造蔵でもなんでも作れるものはたいてい自分で作ってしまうのがすごい。

ワインをより良くするためのあらゆる方法とアイデア。実に配慮が細やかでワイン作りそのものを仕事としてだけでなく、生きる喜びとして昇華しようとする本人の明確な意思が伺われた。

充分に整えられた環境でブドウは最上のワインとなる。


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